パーキンソン病患者では高度の腰曲がり、頸下がり、体幹側屈(ピサ症候群)などの姿勢異常がしばしば認められる。原因として中枢と末梢の多因子の異常、すなわち大脳基底核や知覚運動統合の異常、体のスキーム知覚や姿勢コントロールに関する認知機能の異常、筋骨格系の変化などが関与していると考えられており、具体的にはジストニア、固縮、固有知覚異常、空間認知能の異常、傍脊柱筋の炎症、脊椎や脂肪組織の変化などが原因として指摘されている[1,2]。また、ドパミンアゴニスト、抗コリン剤、アマンタジンは姿勢異常の原因となる可能性があるとされている。こうした姿勢異常は痛みや転倒リスクを増大させ、QOLを悪化させる要因となる。

パーキンソン病患者の姿勢異常に対する薬物治療は多くの場合困難で、抗コリン剤、バクロフェン、アマンタジン、テトラベナジン、クロナゼパムなどが無効であったと報告されている [3]。レボドパ内服への反応にも乏しいが、20%(4.5 cm)ほど前屈の改善が得られたという報告もある[4]。興味深いことに腰曲がりのある患者は、それがない患者に比べ体軸症状においてレボドパ反応性に乏しく、アンチサッケード課題でのエラー増加が認められた[4]。著者らは後の研究で腰曲がりのある患者は脳幹に特定の異常がある可能性を示唆している[5]。KataokaとUenoはレボドパを点滴投与することでレボドパの姿勢異常への効果を精査した[6]。前屈症状は有意に改善し、特にオフの前屈を改善する効果は大きかったが、側屈は改善しなかったと報告している。

Yoritakaらはセレギリンを16週投与して、中等度の腰曲がりの症状があるパーキンソン病患者20名で改善度をみたところ、約5度ではあるが前屈が有意に改善したと報告した[7]。改善反応が見られた患者は後方への体幹の揺れが増えており、体幹の筋トーヌスの改善があったと考えられたことから、腰曲がりの原因はジストニアが主ではないかと考察されている。

近年ではアデノシン2A受容体拮抗薬であるイストラデフィリンの姿勢異常に対する効果が報告されている[8]。18名のパーキンソン病患者のうち、半数の患者が治療に反応し、UPDRS Part3の姿勢スコアを改善したが重症の患者では改善しない傾向があった。Fujiokaらは4名のパーキンソン病患者を対象とした調査において、MRIにて傍脊柱筋の萎縮が中等度あった患者1名のみ改善に乏しかったことから、傍脊柱筋の変性は姿勢異常改善の負のpredictorになるかもしれないとしている[9]。アデノシン2A受容体は大脳基底核関節路を変化させ、脚橋核のコリン作動性出力を減少させ、α-、γ-motoneuronsを介した筋トーヌスの変化を起こすのかもしれないとも推測されている[10]。

[1] Doherty KM, et al. Postural deformities in Parkinson’s disease. Lancet Neurol 10(6):538-549, 2011. doi: 10.1016/S1474-4422(11)70067-9

[2] Barone P, et al. Pisa syndrome in Parkinson’s disease and parkinsonism: clinical features, pathophysiology, and treatment. Lancet Neurol 15:1063-1074, 2016. doi: 10.1016/S1474-4422(16)30173-9

[3] Margraf NG, et al. Pathophysiological concepts and treatment of camptocormia. J Parkinsons Dis 6(3):485-501, 2016. doi: 10:3233/JPD-160836

[4] Bloch F, et al. Parkinson’s disease with camptocormia. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 77(11):1223-1228, 2006. doi: 10.1136/jnnp.2006.087908.

[5] Bonneville F, et al. Camptocormia and Parkinson’s disease: MR imaging. Eur Radiol 18(8):1710-1719, 2008. doi: 10.1007/s00330-008-0927-8.

[6] Kataoka H and Ueno S. Can postural abnormality really respond to levodopa in Parkinson’s disease? J Neurol Sci 377:179-184, 2017. doi: 10.1016/j.jns.2017.04.025

[7] Yoritaka et al. Treatment of mild camptocormia with selegiline in patients with Parkinson’s disease. Eur Neurol 76:35-39, 2016. DOI: 10.1159/000447631

[8] Suzuki K, et al. Could istradefylline be a treatment option for postural abnormalities in mid-stage Parkinson’s disease? J Clin Neurosci 385:131-133, 2018. https://doi.org/10.1016/j.jns.2017.12.027

[9] Fujioka S, et al. A new therapeutic strategy with istradefylline for postural deformities in Parkinson’s disease. Neurol Neurochir Pol 53(4):291-295, 2019. DOI: 10:5603/PJNNS.a2019.0036

[10] Deutschlander AB. Treatment with istradefylline for postural abnormalities in Parkinson’s disease. Neurol Neurochir Pol 53(4):239-241, 2019. DOI: 10.5603/PJNNS.2019.0038