病態生理学的研究は、臨床データと神経生理学的データとの相関関係を元に、根底にある病態のメカニズムを明らかにすることを目的としている。パーキンソン病に関連する研究においては、脳深部刺激療法(DBS)の作用機序の調査がその一例である。具体的にはパーキンソン病における大脳基底核の運動および非運動機能データと、局所場電位(LFP: local field potential)として知られる深部脳波信号を記録/分析することで、DBSの作用機序に関する洞察を得た研究がある[1]。このような研究においては、生体信号等の研究データを安全な環境で収集/共有することが重要である。

大規模な研究では、多施設を跨いでのデータ共有も必要となる。パーキンソン病の研究をサポートする多施設共同研究専用のWebベースのプラットフォーム(WebBioBank)がイタリアで開発された[2]。WebBioBankでは複数施設間で均一なデータ収集が保証され、データの匿名性も患者に関連付けられた一意の識別子を用いて保持される。また、信号処理アルゴリズムを作成し、保存された生体信号に対して信号処理を行うことも可能である。さらに近年では、多施設の大規模データセットを機械学習で利用するための方法も検討されている[3]。

このようなシステムをパーキンソン病患者の遠隔モニタリングと介護者サポートに応用しようという試みもされている。DBS患者の生活の質を確保するためには、患者の状態に関連すると言われているLFPデータと合わせ、患者をより詳細かつ継続的にモニタリングすることが重要である。しかし、医師は患者の状態を臨床訪問時に確認するしかなく、日常の状態を完全に把握することは困難である。一方で、日常的に患者に接している介護者は病気の進行とDBSの状態を把握するための知識を持っていない。そこで、介護者によるDBS患者の継続的なモニタリングを効果的にサポートするためのツールが必要となり、モニタリングシステムにLFPデータ記録を統合した介護者のためのシステムが検討されている[4]。このシステムの確立により、介護者は適切なフィードバックとアラームを得ることが可能である。今後、DBS刺激装置のLFP記録が一般的になることで、DBS患者のケアや介護者のサポート等に対してもこれまで実現できなかったアプローチが検討されていくことであろう。

[1]

Rosa M, et al.

Neurophysiology of deep brain stimulation.

Int Rev Neurobiol. 2012;107:23-55. doi: 10.1016/B978-0-12-404706-8.00004-8.

[2]

Rossi E, et al.

WebBioBank: A new platform for integrating clinical forms and shared neurosignal analyses to support multi-centre studies in Parkinson’s Disease

J Biomed Inform. 2014 Dec;52:92-104. doi: 10.1016/j.jbi.2014.08.014.

[3]

Chu J, et al.

Knowledge-aware multi-center clinical dataset adaptation: Problem, method, and application

J Biomed Inform. 2021 Mar;115:103710. doi: 10.1016/j.jbi.2021.103710.

[4]

Marceglia S, et al.

Web-Based Telemonitoring and Delivery of Caregiver Support for Patients With Parkinson Disease After Deep Brain Stimulation: Protocol

JMIR Res Protoc. 2015 Mar 6;4(1):e30. doi: 10.2196/resprot.4044.